イベントレポート

VMware と AWS の協力関係が支えるクラウドジャーニーとビジネス変革
Session 1 VMware と AWS で実現するビジネスのトランスフォーメーション
最初のセッションでは、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 巨勢 泰宏 氏と、ヴイエムウェア株式会社 神田 靖史が、VMware Cloud on AWS 登場の背景と、デジタル化を巡る展望について対談を行いました。
共通するカルチャー、共通する顧客のニーズ
VMware Cloud on AWS の提供に至る背景として重要なのが、VMware と AWS 両社が共有する価値観です。Amazon の企業ミッションとして巨勢氏が紹介したのが、「地球上で、もっともお客様を大切にする企業であること」という言葉です。つまり自分たちの作りたいものに固執するのではなく、顧客の求めるサービスを提供するというポリシーです。昨年 AWS は3,084もの機能拡張をリリースしましたが、その90%以上が顧客の課題を解決するためのものだと、巨勢氏は語ります。
これに応えて神田が紹介したのが、VMware 前 CEO パット・ゲルシンガーの”Tech as a force for good”(善を為すための力としてのテクノロジー)という言葉です。つまり VMware の企業活動にとっての本質的な価値は、テクノロジーで人々に貢献することです。そして、VMware の企業文化とは、顧客の求めるサービスを開発し、さらに実装までサポートすることで、顧客にとってのトラステッド アドバイザーを目指すことだと神田は語り、両社の価値観には、本質的に共通する部分があることに触れました。
このような両社に「 AWS 上で VMware を動かしたい 」という顧客の声が寄せられた時、共同でソリューション開発に取り組むのは、極めて自然な流れでした。その結果、2016年10月の AWS 年次カンファレンス「Re:Invent」でアナウンスされたのが、VMware Cloud on AWS でした。

顧客にとっての VMware Cloud on AWS の意義
VMware Cloud on AWS が企業のデジタル戦略にもたらすインパクトについて、巨勢氏が指摘したのは、新規領域と既存 IT 領域の性質の違いでした。新規システムであれば、クラウドの特性を活かして、最初から迅速な立ち上げが可能かもしれません。しかし既存の IT システムには他のシステムとの依存関係が存在します。そのため、あるオンプレミスのシステムをクラウドに移行しようとしても、単独での移行は困難になります。加えて、これまでオンプレミスのテクノロジーや人的スキルに投資した資産についても考慮する必要があります。「企業ビジネスにとってクラウド化は急務であるものの、既存の IT 領域については、最初はなるべく手を加えずに、段階的にクラウド化を進めていくのが最も好ましいと考えられます。そこで、既存資産にクラウドの価値を提供する、VMware Cloud on AWS の役割が非常に重要になります」と、巨勢氏は語ります。
巨勢氏の見解を受け、「技術をお客様のために生かし、お客様を何よりも大切にするという両社の思いが形になったものが VMware Cloud on AWS です」と神田は語ります。VMware Cloud on AWS は、2017年のリリース以来、ほぼ毎四半期の単位でリージョンや機能の拡張が行われ、顧客にとってより利用しやすい規模への最適化や、セキュリティ・コンプライアンスなど様々な業界標準に対応を続けています。そして企業アプリケーションのモダナイゼーションを一貫したセキュリティ、ガバナンス、運用手法のもとで実現し、実績調査によれば平均して 57 %ものコスト削減効果を生んでいます。神田は「 VMware Cloud on AWS は、最速でクラウド移行を実現するソリューションとして、様々な国の、様々な企業規模と業種の企業に導入されています」と、その実績を強調します。
強力なパートナーシップの下に VMware Cloud on AWS を推進
VMware Cloud on AWS を巡る両社のパートナーシップは、日本国内でも緊密に進められ、様々な取り組みが行われています。巨勢氏が例として挙げたのが、大阪リージョンでの両社の取り組みです。昨年3月に AWS 大阪リージョンが開設されてから、国内の両社 VMware Cloud on AWS チームが一丸となってグローバルとの対応を進めた結果、わずか半年後に大阪リージョンでの VMware Cloud on AWS 提供を開始することができました。続けて神田は、VMware Cloud on AWS の ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)認証申請でも、両社が協力しながら取り組みを進めていることを紹介しました。
今後の展開として巨勢氏は、Amazon FSx for NetApp ONTAP と VMware Cloud on AWS との連携の取り組みや、今月からスタートした AWS Marketplace での VMware Cloud on AWS の提供を紹介し、今後も両社が緊密に連携して、日本の顧客が求めるサービスの提供に務めることを約束しました。それを受け神田は、「両社は、これまでの技術的なインテグレーションの取り組みに加え、今後はプロセス面での協調も進めていきます。その結果、お客様にとってのクラウドの利便性や迅速性がさらに強化され、またお客様に合わせた様々な選択肢を提供できるようになります」と述べ、セッションを締めくくりました。
Session 2 データセンター拡張から AWS を活用した災害対策戦略まで 〜 VMware Cloud on AWS のご紹介
続いてのセッションでは、ヴイエムウェア株式会社 黒岩 宣隆が、VMware Cloud on AWS の特徴と具体的なユースケースについて紹介しました。
VMware Cloud on AWS は、AWS 上で直接 VMware SDDC を稼働させています。慣れ親しんだ vCenter の画面から仮想マシンを管理できるので、追加のスキル習得は必要ありません。オンプレミスのワークロードやネットワークをそのままマイグレーションできるので、オンプレミス環境を低コストかつ迅速にクラウドに移行することができます。また VMware 自身のファーストパーティーサービスとして運用・サポートが行われているのも特徴です。

オンプレミス環境のクラウド移行に加え、黒岩が VMware Cloud on AWS のユースケースとしてあげたのが、データセンターの拡張、災害対策、そして次世代アプリケーションです。VMware Cloud on AWS は、オンプレミスと一貫したクラウド構築・運用が可能なので、既存のデータセンターを、運用負荷を増やすことなくシームレスに拡張することができます。また VMware Cloud on AWS をバックアップとして利用することで、広域災害やサイバー攻撃から迅速にリカバリすることができます。さらに VMware Cloud on AWS は、クラウドに移行したアプリケーションを、徐々に AWS ネイティブサービスと連携させたり、VMware Tanzu を通してクラウドネイティブ化を実現したりするなど、アプリケーションの段階的なモダナイゼーションにも貢献します。
Session 3 お客様事例「VMware Cloud on AWS」と「AWS」によるハイブリッドクラウドの実践
事例セッションでは、株式会社ゼンリンデータコム 渡邊 大祐氏が、VMware Cloud on AWS への自社サービス基盤移行にあたっての検討事項や、移行後の効果について、実践を踏まえた具体的なポイントを紹介しました。
新たなインフラ基盤の検討が始まったのは、2018年でした。VMware によるサーバ仮想化が完了し、コスト・可用性の面で既存のオンプレミス基盤が成熟する一方、新規システムでは年々 AWS の利用台数が増加し、クラウドの柔軟性や驚異的な進化速度が認識され始めていました。クラウドに移行すれば、既存システムでもこれらのメリットを享受できますが、移行に伴う開発チームへの負担は大きな課題でした。そこで、既存の仮想マシンをそのままクラウドに持っていける VMware Cloud on AWS は、クラウド移行に伴う負荷を大幅に軽減できる、まさに「渡りに船」となりました。


VMware Cloud on AWS による基盤は、2020年10月から本格的に稼働し、安定稼働を続けています。さらに移行の結果、オンプレミスと比較して約 40 %のコストダウンに成功しました。オンプレミスとクラウドの並行期間に発生したコストも、わずか3年で相殺できる見込みです。
Session 4 AWS サービスとの連携による、さらなるクラウドのメリットの享受
後半のセッションでは、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 豊田 真行氏が、VMware Cloud on AWS と AWS ネイティブサービスの連携について解説しました。
VMware Cloud on AWS と AWS サービスを連携することで、機能補完やコスト削減、データ活用、新規ビジネス展開など、様々なビジネス価値が生じます。豊田氏は、いくつか具体的な連携パターンを紹介しました。まずは AWS サービスを利用した Web システムのセキュリティ強化です。Elastic Load Balancing や AWS WAF と連携することで、負荷分散やセキュリティの強化を、迅速かつコストを抑えて実現できます。次にデータサービスとの連携による運用負荷・コスト削減です。VMware Cloud on AWS から直接 Amazon RDS を利用することで、工数の掛かるデータベース管理から開放されます。また AWS System Manager を利用することで、VMware Cloud on AWS 上の仮想マシンと Amazon EC2 で運用の一貫性を実現し、管理の一元化や自動化を行うことができます。Amazon Fsx など AWS 上のストレージサービスを連携することで、総コストと運用負荷を削減します。Amazon S3 と連携すると、機械学習やデータ分析など幅広いデータレイク活用が可能になります。このように、VMware Cloud on AWS へ移行することで、AWS と段階的に連携しながら、クラウド活用の幅を広げ、その後のクラウドジャーニーを策定することが可能になります。

Session 5 クラウドネイティブを具現化する VMware の AWS ソリューション〜コンテナアプリケーションの構築、実行、管理、監視を支援する VMware Tanzu のご紹介
続いてヴイエムウェア株式会社 柳原 伸弥が、VMware Cloud on AWS と VMware Tanzu によるクラウドジャーニーとモダナイゼーションへの道筋について解説しました。
新規アプリケーションは、最初からクラウドの仕様に沿ってしがらみなく開発できますが、既存アプリケーションの場合は、クラウドの仕様が大きな制約になります。しかし、企業の価値創出を支えるソフトウェアの大半は、既存アプリケーションです。そこで、クラウドのメリットを享受するためには、既存アプリケーションのモダナイゼーションを考える必要があります。
既存アプリケーションにコンテナやマイクロサービスなどの技術を取り入れるのは難しいと思われるかもしれません。しかしそれらの技術は、クラウドネイティブ実現の一手段であって、目的ではありません。大切なのは、クラウドネイティブの目的である、回復性や管理力、可観測性を実現することです。クラウド移行や AWS サービスとの連携、さらに VMware Tanzu による Kubernetes と vSphere 環境の統合など、VMware Cloud on AWS によっても、クラウドネイティブの目的を実現することが可能なのです。


Session 6 VMware と AWS で実現するクラウド基盤のトランスフォーメーション
最終セッションでは、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 河原 哲也氏と、ヴイエムウェア株式会社 小林 政明の対談を通して、セッションを振り返りながら、イベント全体の総括が行われました。
河原氏は、VMware Cloud on AWS が、VMware と AWS が共同開発しているサービスであることを改めて強調しました。「両社のカルチャーが融合し、両社が密に連携しながら、顧客の課題にともに向き合うことで、高品質で使いやすい新機能を矢継ぎ早にリリースできるのです」と河原氏は語ります。一方、小林は、オンプレミス環境のハードウェア管理だけでなく、VMware ソフトウェアのライフサイクル管理にも工数が掛かっていたという顧客の声を紹介し、「VMware Cloud on AWS を使うことで、お客様が従来インフラの運用管理に割いていた時間とリソースを、ビジネスの源泉になる部分に振り向けることができます」と、そのメリットを強調します。
最後に河原氏は、AWS、VMware、そして両プラットフォームの知見を持つパートナーが三位一体となって顧客のビジネス変革を支援する決意を述べました。それを受け小林は、クラウド移行の先にあるモダナイゼーションまでをゴールと考え、VMware Cloud on AWS が顧客のクラウドジャーニーの中心に位置づけられるようサービスを進化させたいと語り、イベントを締めくくりました。
ウェビナー/オンデマンド配信
VMware Cloud on AWS Day
AWS 上のアプリケーションライフサイクルを支援する VMware のソリューションを一同に紹介